読書会というものを開いてみました

受験の話じゃなくて、本の話をしたい

中学受験において国語が専門なので、仕事柄、本に触れる機会は多いわけですが、読んだ本のことを話す機会は意外とないもので。本を読めば同じ本を読んだ人と感想を話したくなり、おすすめは?と聞かれればあれもこれも熱く語りたくなってしまいます。そういう人が集まる場所=読書会があるじゃないかと思ったのが数年前のことでしたが、コロナ禍で対面の読書会はことごとく中止。
レッスンでは中学受験の国語の出典としての本ですし、「勉強せずに本ばかり読んで困ります」というご相談を受けることもあります。中学受験も佳境のご家庭にとっては、読書は余裕がないと時間を捻出できないものなのかもしれません。

でも、国語の勉強は乗り気でない子でも、レッスンの終わりに出典として読んだお話について広げてあげると楽しそうに聞きますし、本の話になると突然饒舌になることもあります。そして、本を読んで感じたことを言葉として出す経験を全然していないなと感じました。この子たちにもっと良い読書環境があればなぁと考え、「子どもを対象にした読書会をやりたい」という気持ちが出てきたことで読書会熱が再燃したわけです。
・・・ということでまずはこの春はまず自分が読書会へ足を運ぶことに。

参加者としての読書会

オープンで募集が行われていた読書会に2度ほど参加してきました。
どちらも対面で、人数は10名弱、自由に本を持ち寄るスタイルでした。
わたしのように読書会自体初めての方も、色々と渡り歩いている方もどちらもいたのですが、それによって居づらさを感じたりわかりにくいことがあったりということはありませんでした。主催者の方の気遣いやファシリテーションのおかげもあったのだと思います。

それにしても、膨大な本の中から1冊を選ぶとなると、匿名で参加しているにも関わらず、いや、むしろ匿名で参加しているからこそ、その1冊の本が自分を表しているような気がして気負ってしまいました。。読後感を覚えていても、すっかり内容を忘れていたり、好きだけど今の気分じゃなかったり、今の自分の言葉で、良さを素直に伝えられる本をと思うと難しかったです。

ファシリテーターの方がタイムキーパーになってくださり、軽い自己紹介と共に本の発表をします。プレゼンというのとは違って、選んだ理由でも感想でも、好きなフレーズでも、なんでもありです。自分の発表がおわると、それについてみなさんが質問やコメントをくださいます。
課題の本がある場合と異なり、次にどんな本がでてくるかわからないワクワク感は刺激的ですね。青空文庫からの紹介があったり、太宰治の表現を掘り下げたり、エルトンジョンの伝記を語りながら音楽が流れたり、、、絶対自分からは手を出さないような本の中身をつまみ食いすることができ、改めて自分の好みを再確認することにも繋がりました。

そして読書会を開いてみた

そもそも、子どもの読書会をしたいと思っていたわけですが、お子さんたちを「行かせたい」と思う会はどんなものかと考えて、まずは自分の思う読書会を開いてみることにしました。知らない人同士が本を通じて会話することで起こる化学反応が楽しい=人にフォーカスした読書会、というのがふわっとイメージした形です。課題本があれば、本が主役になるところを、それぞれが本を持ち寄ることで人も本も両方が主役になるような会にしたい、ということです。

2度の読書会、それぞれごく少人数ではありましたが、集まった本は計24冊!熱量高く何冊も持ってきてくださった方や、今まさに読んでいる最中の本を見せてくださる方など、人数からは想像できない本の集まりに嬉しい驚きでした。

本の内容についてだけではなく、選び方や手に取るきっかけのお話、オーディオブックのすすめ、などなど多岐にわたり、フリーで話せる時間をたっぷり取っておいたのも正解でした。

「プレゼン」「ビブリオバトル」というような前に出て発表するスタイルではなく、テーブルを囲んでお茶をしながら好きなように話す、この形だからこそ話せることがあるなと感じます。参加してくださった方々に感謝いたします。

読書会で紹介した本たち

ちなみに、わたしの選んだ本はこちらの4冊。
どちらも今年に入って出会い、読んだ後に人と話したくなりうずうずした本です。

『ことばのかたち』おーなり由子

-もしも話すことばが目に見えたら―――ことばの使い方は変わるだろうか?-

卒業生のお母さまからの贈っていただいたこの本は、どうして今まで出会わなかったのかと思うくらいのお気に入り本になりました。

優しい水彩画の彩りの中に、語り掛けるように言葉が並びます。日々あたりまえに使う言葉の向こう側にいる相手を想像できるかどうか。読み聞かせで一緒に読んでほしい一冊です。

『料理と利他』土井善晴・中島岳志

「自然−作る人−食べる人」という関係のあいだに、利他がはたらく。
料理研究家の土井さんと、政治学者の中島さんの対談を起こしたもので、読みやすいつくりなのに内容は深い。

昨年から入試問題や模試で扱われていて、興味のある概念だった利他について掘り下げられて大満足の一冊でした。料理、民藝、宗教、哲学、、、「利他」ってこんなところにもあったのかと気づかされます。まるで教養のデパートのような対談です。

『線は僕を描く』砥上裕將 

とても優しく、静かで綺麗な本でした。水墨画の世界を通して喪失からの再生、孤独を感じながらも成長していう主人公の姿が淡々と書かれます。一つひとつの言動の細やかな描写が美しく、作者の砥上さんが水墨画家と知って納得しました。小学生には少し難しい心情ではありますが、過去に入試問題や模試にも登場しています。

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『氷柱の声』くどうれいん

「震災」を語る難しさをこの小説に見た気がしました。被災者になったことのないわたしにとっては、あとがきも含めて「書いてくれてありがとう」と素直に思ったことを残しておきます。

小説を作者のあとがきで補完することに対し批判的なコメントもあるようですが、小説の形に拘ることよりも、それを含めてこの作品を受け止めることの方が大切に感じました。

「こどもの読書会」に向けて

こちらを読んで、読書会に興味をもってくださった方はいるでしょうか?正直、中学受験の国語の成績に直結するようなものではありませんが、、それでも、世の中にあふれる良書に少しでも多くの子どもたちが触れられるように、環境づくりの一つとして読書会を開きたいと思っています。そして、長い目で見たときに、家にいる大人が本を読んでいる姿は子どもにとって良きモデルとなってくれるはずです。

「オトナの読書会」も不定期にでも続けていきたいと思いますので、興味を持った方はコメントやメッセージなどいただけると嬉しいです。2人集まれば「読書会」だと思っています◎

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